ワイドナショーの読解力問題を解説
2019年12月8日放送の『ワイドナショー』で出てきた読解力問題。
ダウンタウンの松本人志さんをはじめ、出演者の方々はけっこう回答を間違えていました。
番組内では問題と解答はありましたが、解説はありませんでした。
そのため、番組を見てたけどよく分からないままという人もいるかもしれません。
松ちゃんは「なんでか教えてよ」と最後まで分かっていない様子でした。
ちなみに、問題は国立情報学研究所の新井紀子教授が行った読解力調査(リーディングスキルテスト)で使用したものだそうです。
「問題」と「解答」と「解説」を載せておきます。
ぜひご一読ください。
問題1: 出題
メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。
メジャーリーグ選手の出身国の内訳を表す図として適切なものをすべて選びなさい。
(正答率は中学生が12%、高校生が28%)
問題1: 解答
読解力テスト、「問題1」の正解は
②番
です。
問題1: 解説
問題文の不備
まず、前提として言っておきますが、そもそもの出題文が日本語としては不親切です。
「ドミニカ共和国が35%」と説明がありますが、何に対しての35%なのかが不明瞭です。
- A. メジャーリーグ選手全体の35%なのか?
- B. 外国人選手のうちの35%なのか?
この点が曖昧です。
しかし、「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手」という記載があるので、メジャーの外国人比率は28%です。
「ドミニカ共和国の出身者がメジャー全体の35%」だとすると、「外国人比率は28%」という話と矛盾します。
つまり、Aパターンではないといえます。
そして、Bパターンの「ドミニカ共和国の出身者は外国人選手のうちの35%」だと間接的に判明します。
ドミニカ共和国が35%だからかろうじてセーフですが、「ドミニカ共和国出身者は10%」と書かれていたらアウトです。
「メジャー全体で10%」なのか「外国人のなかでの10%」なのかは出題文の情報からだけでは分からないままになってしまいます。
日本語の不備とは無関係に回答は可能
出題文の日本語に問題があるのは事実ですが、それとは無関係に正解は導き出せます。
問題文に「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手」とあります。
言い換えると、メジャーのアメリカ人比率は72%です。
①の正誤判定
全体の人数は1035人。
(720+280+35=1035)
アメリカ人の比率は69.6%です。
(720 ÷ 1035 = 0.6956…)
つまり、アメリカ人の比率が72%ではないので①の円グラフは誤りです。
ちなみに「720÷1000=72%」なので、「720÷1035」が72%ではないことは最後まで計算しなくても分かります。
暗算の能力が高くなくても真贋判定は可能です。
②の正誤判定
円グラフで、アメリカ合衆国の割合が72%なので正解の可能性があります。
「ドミニカ共和国が35%」というのが「外国人選手28%のうちのさらに35%」という意味だったとしたら、ドミニカ共和国出身者はメジャー全体では9.8%になります。
0.28 × 0.35 = 0.098
これも円グラフの情報と一致します。
③の正誤判定
円グラフで、アメリカ合衆国が36.6%となっているので明確な間違いです。
メジャーのアメリカ人比率は72%です。
④の正誤判定
円グラフで、アメリカ合衆国が28%となっているので明確な間違いです。
メジャーのアメリカ人比率は72%です。
まとめ
①と③と④が間違いなので、残る②が正解です。
問題文に若干の不備がありますが、「ドミニカ共和国35%」という情報が
- A. メジャーリーグ選手全体の35%なのか?
- B. 外国人選手のうちの35%なのか?
この点が不明なままでも回答が可能です。
補足
ただし、「適切なものをすべて選びなさい」という出題なので、「すべて適切ではない」という回答がありえます。
厳密に回答をするには、「ドミニカ共和国の出身者はメジャー全体の35%」ではなく、「外国人選手のうちのさらに35%」という情報は必要になります。
問題2: 出題
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
「セルロースは( )と形が違う。」
A. デンプン
B. アミラーゼ
C. グルコース
D. 酵素
問題2: 解答
読解力テスト、問題2の正解は
A. デンプン
です。
問題2: 解説
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
出題文の前半
出題文の
「アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解」
という部分から以下の情報が読み取れます。
- アミラーゼはデンプンを分解する
- デンプンはグルコースがつながってできている
出題文の中盤
出題文の
「同じグルコースからできていても」
の部分から以下の情報が読み取れます。
- デンプン以外の「何か」もグルコースからできている
出題文の後半
出題文の
「形が違うセルロースは分解できない」
の部分から以下の情報が読み取れます。
文章全体
「アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。」
という出題文全体から、末尾の「セルロースは分解できない」の主語は、冒頭の「アミラーゼという酵素は」だと思われます。
簡潔に書くと
「アミラーゼはセルロースを分解できない」
となります。
読み取った情報を組み合わせる
出そろった情報を並べます。
- アミラーゼはデンプンを分解する
- デンプンはグルコースがつながってできている
- デンプン以外の「何か」もグルコースからできている
- 「何かA」はセルロースと形が違う
- 「何かB」はセルロースを分解できない
- アミラーゼはセルロースを分解できない
5番と6番
5番と6番は同じことですね。
「何かB」には「アミラーゼ」が入ることが判明します。
1番と6番
- アミラーゼはデンプンを分解する
- アミラーゼはセルロースを分解できない
1番と6番はセットです。
アミラーゼは「デンプン」を分解するけど、「セルロース」は分解できない。
「デンプン」と「セルロース」は対になる存在だと判明します。
2番と3番
ここまでの流れから、「デンプン」と「セルロース」が対になる存在だと分かっています。
そのため、グルコースからできている「デンプン以外の何か」とは「セルロース」のことだと分かります。
整理した情報を並べ替える
「セルロース」と対になるのは「デンプン」です。
そのため、「何かA」には「デンプン」が当てはまります。
問題を振り返ると
「セルロースは( )と形が違う。」
というのが出題内容でした。
つまり、( )には「デンプン」が入ります。
出題文を分かりやすく
出題文分りやすい文章に直すと以下のようになります。
しかし、アミラーゼは「デンプン」を分解するが「セルロース」は分解できない。
なぜなら、「デンプン」と「セルロース」は形が違うからである。
元の出題文
書いてあることは同じなんですが読みやすさが全然違いますね。
問題2の正答率
公立中学校 | 中高一貫校 (中学) | 公立高校 | |
---|---|---|---|
A | 9% | 27% | 33% |
B | 29% | 40% | 57% |
C | 53% | 27% | 8% |
D | 9% | 6% | 2% |
正解はAです。
高校生の正解率が33%なので、3人に1人しか文章の意味を理解できなかったということですね。
主語があいまいで分かりにくい文章ではありますが、ちょっと正解率低すぎかな?
問題文の不備
「デンプン」と「セルロース」はどちらも同じ素材で構成されるが、形が違うから分解できない。
という文章の意図を理解しているかを問う意味では「デンプン」が適切な回答になりますが、厳密にいうとすべての選択肢が正解だと思います。
アミラーゼとセルロースは形が違うし、
グルコースとセルロースは形が違うし
酵素とセルロースは形が違います。
たとえば、「セルロースはグルコースからできている」ので「セルロース」単体と「グルコース」単体で見れば形は違います。
というわけで、正解率が低いのは仕方ない。
問題が悪い。
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