尿路結石とは?
尿路結石とは
尿路結石、通称尿路結石症、は腎臓から尿道までの尿路に生じる結石がもたらす疾患です。
泌尿器科の外来で最も頻繁に診られる疾患の一つであり、その罹患率は年々上昇しています。特に、壮年男性と閉経後の女性に高頻度でみられるのが特徴です。
症状
尿路結石症の症状は、疝痛発作(急激な痛み)と血尿が典型的です。
通常、腎結石は無症状ですが、尿管内で結石が動き、尿の流れが阻害されると、腰背部から側腹部にかける激しい痛みや下腹部への痛みが発生します。これらの症状は通常、夜間や早朝に現れ、約3~4時間続きます。また、腎盂腎炎を併発し、高熱が現れることもあります。下部尿管に結石がある場合、膀胱刺激症状も一緒に現れ、頻尿や残尿感が生じます。
腎結石は通常無症状で経過することもあり、検査で偶然発見されることがあります。症状がある場合でも、腰部の鈍痛だけが自覚されることもあり、結石周囲で細菌感染がある場合は、膿尿や細菌尿がみられることがあります。膀胱結石や尿道結石の場合、膀胱刺激症状に加え、尿流の途絶も生じることがあります。
結石が排出される際には、通常、排尿痛や違和感を伴うことがありますが、無自覚で排石されることもあります。
尿路結石の疫学
尿路結石は、上部尿路結石と下部尿路結石に分けられ、男性と女性で発生率に違いがあります。上部尿路結石は95%が男性で、下部尿路結石は女性に多くみられます。
年間羅患率のデータによれば、男性の発生率は1965年には64、1995年には118と上昇しています。女性の場合は、1965年には24、1995年には46と増加しています。生涯羅患率も年々増加し、男性は1965年の4.3%から1995年には9.0%に、女性は1965年の1.8%から1995年には3.8%に上昇しています。
年齢別の羅患率は、1965年には20~40歳代でピークを迎え、1995年には30~60歳代でピークを迎えたことが示唆されます(特に男性において)。
結石の分類
結石は存在部位による分類と結石の種類による分類に分けられます。
存在部位による分類では、腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石があり、腎臓と尿管の結石は上部尿路結石、膀胱と尿道の結石は下部尿路結石として扱われます。上部尿路結石と下部尿路結石では、原因や治療法に違いがあります。
結石の種類による分類では、シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、およびこれらが混在する結石が最も頻繁に見られます。また、尿路感染によって形成されるリン酸マグネシウムアンモニウム結石や、遺伝的に発生するシスチン結石も存在します。
特殊な名称の結石として、腎結石が腎臓内に
増大し鋳型状になった結石はサンゴ状結石、尿管内で長期に位置し尿管との癒着が強い結石は嵌頓(かんとん)結石と呼ばれます。
結石の形成と成因
結石の形成過程
腎臓内で、遠位尿細管から集合管、乳頭上皮において、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが尿中で飽和状態になり、結晶が析出します。結晶核が形成されると表面に晶質(シュウ酸、リン酸、カルシウム)が付着し、結晶は成長し、凝集し、凝集塊をもとに結石が形成されます。微小な結晶や結石は無症状のまま排尿されますが、晶質や有機物が付着し、一定の大きさに成長することがあります。結石が排出される際には、血尿や疼痛が発生することがあります。
結石形成の成因
結石形成の過程には、腎臓から尿道に至る尿路の通過障害や変形など、多くの要因が関与します。これにより、尿流の停滞が引き起こされ、結石の発生が促されます。例えば、水腎症では腎結石が、前立腺肥大症や神経因性膀胱では膀胱結石が生じやすく、長期の臥床者では尿流の停滞と骨吸収の進行が結石の原因となります。
慢性的な尿路感染も結石形成の重要な因子です。特に、尿素分解酵素を有するグラム陰性桿菌が尿素からアンモニアを形成し、尿をアルカリ化するため、リン酸マグネシウムアンモニウムやリン酸カルシウムが析出しやすく、結石が形成されます。
代謝異常は最も重要な危険因子の一つです。高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、低クエン酸尿症、低マグネシウム尿症は、結石形成に大きく寄与します。また、尿のpH(酸性度)も結石形成に影響します。アルカリ尿ではリン酸カルシウム結石やリン酸マグネシウムアンモニウム結石が形成されやすく、酸性尿では尿酸結石やシスチン結石が形成されやすくなります。稀に、内服している薬剤が結石の原因となることもあり、例えば、緑内障治療薬であるアセタゾラミド、活性型ビタミンD、尿酸排泄促進剤(プロベネシド)、AIDS治療薬インジナビルなどが挙げられます。
このページは移転しました。